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ヨーロッパ最果ての地、ポルトガルの記憶

久しぶりの投稿になってしまいました。どうもTwitterばっかりやっちゃいますねぇ(言い訳ですが)。
ふと思い立って、ポルトガルのことでも真面目に書いてみようと思います。
(ここから少し文体を変えます。仕事柄、どうも「です・ます」調だとうまく書けないもんで)

僕がポルトガルを訪れたのは2007年7月のことだった。
滞在期間はわずか10日ほど。スペインのマドリッドから長距離バスで6時間かけ——スペインの長距離バスはとても快適なので、この移動時間もさほど苦になるものではない——首都リスボンに辿り着いたのは、日もだいぶ落ちた夕方のことだった。
バスターミナルから電車で市街地へ。それから徒歩でその日の宿を探す。

リスボンに辿り着く前に旅していた国は、全部で9か国。フィンランド、ハンガリー、ギリシャ、イタリア(とシチリア)、チュニジア、モロッコ、スペイン、フランス、スイス。ポルトガルでちょうど10か国目、旅の全行程で21か国を回ったので、ほぼ折り返し地点ということになる(実際、ポルトガルからスペインに戻った後の僕は、南米チリへとひとっ飛びすることになった)。
そんなこともあって、少し旅のペースを掴み始めていた僕は迷うことなく安宿街へと歩みを進めた。
年期の入った売春婦、頭が二倍ほどに膨れ上がってしまったホームレス、周囲の店が閉店した後も根気よく営業を続ける中国人スーパー、崩れかかった廃墟、壁に乱暴に書かれたグラフィティ、愛想のない安宿の店主。
嫌が追うなく、自分がヨーロッパ最果ての地までやってきてしまったことが実感された。

ポルトガルを訪れた理由ははっきりとしていた。
ちょうどヨーロッパ・ツアー中だったマヌ・チャオのライヴを観るため。南仏ではタッチの差で観ることができなかったことから、僕は意地でも彼のライヴを観ようと必死になっていた。そして、当初訪れる予定もなかったポルトガルまでやって来てしまったのだった。

マヌ・チャオが出演する巨大フェス「SUDOESTE」が開催されるのは、首都リスボンからさらにバスで5時間ほど行ったところにあるザンブジェイラ・ド・マールという小さな町。普段は物好きなサーファーが訪れるぐらいでひっそりとした町だが、このフェスの時だけは数万人単位の観客がヨーロッパ中から押し寄せる。
何のインフォメーションもないなか(なにせフェスのオフィシャル・サイトもないのだ!)なんとか辿り着いた会場は、周囲5キロに民家もないような荒野の真ん中にあった。そんなところまでやってくるアジア人観光客などいるはずもなく、会場を歩いていると時たま物好きなポルトガル人に声をかけられたりもした。
ヨーロッパ最果ての国、そのさらに最果ての地。たった2週間前までその地名すら知らなかったザンブジェラ・ド・マールで観たマヌ・チャオのライヴは、異邦人であることを肌身で感じていた僕にはやたらと温かく聴こえた。そして、次の目的地である南米へと旅を進めるのが多少おっくうになっていた僕は、マヌ・チャオの歌声に背中を押されたような錯覚に陥ったのだった。
もちろん、それが貧乏旅行者の——いくらかの感傷を含んだ——妄想であることは分かっている。でも、ザンブジェラ・ド・マールの非日常的な空間のなかにいると、そういった類いの妄想がいくらでも頭のなかを占領し、僕はその場で(やたらと居心地の良かった)旧大陸を離れることを決意したのだった。

リスボンに戻った僕は、夜になると入り口に売春婦が立つ安宿に舞い戻り、定食屋でオリーブオイルでギトギトになったイワシをツマミに白ワインを呑んだりしながら、残された数日を過ごした。
バイロ・アルトという地区にあるファドが流れる酒場を覗いてみたけれど、同じ地区にあった小さなレゲエ専門レコードショップのほうが僕には居心地が良かった。観光客慣れした酒場の親父の営業トークよりも、70年代のジャマイカの音楽について熱く語るレコードショップの若い店員のほうにこそ親しみを持てたからだ。
ヨーロッパ最後の数日間は、なんとも心地のいいものだった。そして、リスボンの街並が不思議と愛おしくなっていたことに、その時はじめて気づいたのである。

ポルトガルというと、僕はザンブジェイラ・ド・マールのだだっ広い風景と、廃墟の横で売春婦が客待ちをする夜のリスボンを思い出す。
それは確かにヨーロッパ最果ての地に相応しいものではあったのかもしれないけれど、その風景は僕の記憶のなかにやたらと鮮烈に刻み込まれている。

(ここから文体が戻ります)
ちなみに、ポルトガルのワインはびっくりするほど美味しかった!
チリのサンチアゴで呑んだ白ワインもかなりのものだったけど、ポルトガルもそれに並ぶほど。それまであまりワインが好きではなかった僕は、ポルトガルとチリ、そしてフランスのボルドーですっかりワイン愛好家になってしまったのでした。
現物をチェックしていないのですが、雑誌「ペーパースカイ」ではそのあたりの記事もたっぷり掲載されているよう。
上で書いた僕のポルトガル紀行はかなり偏った体験を元にしたものですが、こちらではポルトガルという国の多彩な魅力が紹介されているはず。僕もチェックしてみようと思います。

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地上で読む機内誌『ペーパースカイ』ポルトガル特集


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by hazimahalo | 2009-10-27 11:44 | ヨーロッパ