ユッスー・ンドゥール「魂の帰郷」を観る

昨日THA BLUE HERBの取材をしてきたんだけど、実はおととい、取材日を1日勘違いして取材場所に足を運び、かなりの時間を無駄にしてしまった(ま、それだけ気合いが入ってたったことなのかもしんないけど)。
というわけで、せっかく渋谷まで出てきたのにそのまま帰るのも馬鹿馬鹿しいっていうんで、以前から観ようと思ってたユッスー・ンドゥールの映画「魂の帰郷」を鑑賞してきました。

説明するまでもなく、ユッスーはセネガルのスーパースター。
僕は数年前、東京JAZZに出た時の彼のライヴを観たんだけど、その際のライヴは東京JAZZの劣悪な音楽環境の影響もあって、どうもノメリ込めなかったことを思い出す。
とはいえ、ユッスー自体はもの凄く好きな音楽家で、新旧問わず彼の作品はちょこちょこと聞き返している。

「魂の帰郷」は、セネガルの沖合に浮かぶゴレ島からジュネーヴやアトランタ、ニューヨーク、ルクセンブルグなどを回りながら、さまざまな音楽家との出会いを通して「アフリカ人がどこから来たのか」想像を働かせていく、というもの。いわばユッスーを主役としたロード・ムーヴィーといった趣き。

面白いのは今回の音楽的テーマに「ジャズ」を置いていることで、ニューオーリンズのアイドリス・ムハマド(凄く格好いいソロ作も出してる)などがバックに名を連ねていること。
ただし、そこにユーロ・ジャズの音楽家なども交えているから、メンバーとしては白黒混合。アフロ系の力強さ、白人系の繊細さが混ざり合ったバックの上でユッスーも伸びやかに歌を紡いでいく。

物語のラストは、かつて奴隷貿易の拠点となったゴレ島に戻ってのライヴ・シーン。
世界中で集めてきた音楽家と共にゴレに戻ってくるわけだけど、この場面がもっとも胸を打つ。
特に、アトランタのゴスペル・クワイアのオッサンたちがゴレに渡り、自身のルーツに思いを馳せる場面。敬虔なキリスト教徒である彼らが奴隷貿易の際に白人の宣教師が果たした役割を知り、そして彼らの祖先たちのために歌う場面には涙腺も緩む。
イスラム教徒であるユッスーとキリスト教徒である彼らが理解し合おうとする姿もまた、この映画の重要なテーマのように思う。

その他、アイドリス・ムハマドがダカールの港で思いっきりボラれたり、ニューヨークとゴレの女の子シンガーが仲良くなったり、はたまたユッスーのバンド・リーダーぶりが観れたり、詩人であり思想家であるリロイ・ジョーンズ(「ブルース・ピープル」は名著!)とユッスーの2ショットが観れたり、まるでキングストンのゲットーみたいなダカールの風景を観れたり…と、随所に見所が。

世界中に散らばる黒人系音楽の一部の共通点を見出しつつ、バックボーンの違いを音楽で埋めていくあたりには、ブラック・ミュージックを愛するものであれば誰しも感じ入るものがあるはず。
この手の(言ってしまえば)「バンドやろうぜ!」ものってここ数年多くて、正直観る価値のないものも結構あるんだけど、この「魂の帰郷」からはイマジネーションであらゆる差異を埋めていこうとする野心のようなものが感じられた。
ニューオーリンズもアフリカ音楽もジャズもブルースもソウルもヒップホップも好きな僕にとっては、それぞれの音楽を紐解いていく際のガイドになるようなこういう映画の公開は素直に嬉しい。

上映は渋谷シアターNにて。
ぜひチェックしてみてください。

なお、以下は同作のトレイラー。上映開始から10秒で泣いたのははじめてだよ(笑)。


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by hazimahalo | 2009-02-19 15:44 | アフリカ