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ビティ・マクリーンの思い出

先日、ビティ・マクリーンとスライ&ロビーのライヴに行ってきた。
ビティは2006年に来日した際のライヴも観たけれど、今回はスライ&ロビーとのライヴ。同じ編成でヨーロッパでやっていたライヴはタッチの差で観れなかったので、今回は念願叶って、といったところ。

ビティについては忘れられない思い出がある。
場所はジャマイカのキングストン。レイタウンという町で毎週日曜にやっているダンスでのことだ。
このダンスは、今や少なくなったロックステディやルーツなどオールディーズ専門のダンス。古き良きジャマイカが体験できるとあって、近くに住む親父どもが大挙して押し寄せる。d0010118_14473232.jpg場所はゲットーのストリート。目一杯オシャレした年配の方々が気持ち良さそうに揺れる図は、ダンスがまだ平和だったかつての光景を連想させる。
ビティ・マクリーンの“Walk Away From Love”がかかったのは、ダンスも佳境に入った深夜3時ぐらいだったと思う。
もともとこの曲が大好きだった僕は、自然と手を挙げる。流れ出す、聴き馴染みのあるメロディー——。

この時、突然、レイタウンは停電になったのだ。周囲は真っ暗、そして無音。
僕はその時、自分の頭上に満点の星空が広がっていたことに気づかされた。まるで星が降ってきそうな夜空。それをいなたい親父どもと眺める、不思議な感覚。
数十秒後、何事もなかったように電気が復活し、“Walk Away From Love”がイントロから流れ始める。僕はもうたまらなくなってしまって、ボロボロと大泣きしてしまったのだった。夢にまで見たジャマイカに僕はいる。長いレゲエの歴史の一部に、まさに今触れている。そんなことが突然実感されたのだろう。

ジャマイカに滞在したのは2007年末から翌年にかけて2か月ほど。その滞在のなかで一番印象深かったのはこのシーンだった。多少ロマンチックすぎるかもしれないけれど、レゲエを愛する人間にとって、この状況で冷静にいるほうが無理だと思う。ジャマイカは、東京という町で生まれ育った人間の理性をいとも簡単に解きほぐしてくれたのである。

ビティとスライ&ロビーのライヴは予想を遥かに上回る素晴らしさだった。
その日、ライヴの前にビティにインタヴューさせてもらったのだが、その時感じた人柄の良さがステージ上に溢れていた。
レゲエはテクニックやセンスで成り立っている音楽ではない。どんな気持ちで一音・一音を鳴らしているか、どんな思いで歌を投げかけているのか。そこが残酷なまでに滲んでしまう音楽だ。
彼らのライヴは、音楽に対する情熱と愛情を強く感じさせるものだった。
それは感動的なほどで、僕はサングラスをかけてこなかったことを後悔するほど大泣きしてしまったのだった。

なお、この日取ったビティのインタヴューは、次号の「ROVE」にて掲載予定。
こちらのブログでは原稿に反映できなかった部分も含め、「ROVE」発行後に全文掲載するつもりです。

というわけで、今回は先述した“Walk Away From Love”を。


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by hazimahalo | 2009-03-08 15:04 | カリブ